2026年のMLBで、捕手としてのABSチャレンジ成功率が際立ったのはJ.T.リアルミュートでした。86回の挑戦で70回の判定を覆し、成功率は81.4%。ただし、成功率が高い捕手と、多くのストライクを取り戻した捕手は必ずしも同じではありません。
ABSチャレンジ成功率ランキング:20回以上ではリアルミュートが首位
2026年レギュラーシーズンの捕手本人による守備時の挑戦を対象に、20回以上の選手を成功率順に並べると、上位10人は次のようになります。打者として行った挑戦や、その捕手が守っている間に投手が行った挑戦は含めません。
| 順位 | 捕手 | 球団 | 挑戦 | 成功 | 失敗 | 成功率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | J.T.リアルミュート | フィリーズ | 86 | 70 | 16 | 81.4% |
| 2 | サンディ・レオン | ブレーブス | 21 | 16 | 5 | 76.2% |
| 3 | ミッチ・ガーバー | マリナーズ | 34 | 25 | 9 | 73.5% |
| 4 | アンドリュー・キズナー | ジャイアンツ | 36 | 26 | 10 | 72.2% |
| 5 | ダニー・ジャンセン | レンジャーズ | 32 | 23 | 9 | 71.9% |
| 6 | サルバドール・ペレス | ロイヤルズ | 65 | 46 | 19 | 70.8% |
| 7 | カイル・ヒガシオカ | レンジャーズ | 43 | 30 | 13 | 69.8% |
| 8 | カーソン・ケリー | カブス | 93 | 64 | 29 | 68.8% |
| 9 | タイラー・ステファンソン | レッズ | 136 | 93 | 43 | 68.4% |
| 10 | ハンター・グッドマン | ロッキーズ | 113 | 77 | 36 | 68.1% |
対象は2026年レギュラーシーズン。成功率=成功数÷挑戦数。20回は本記事の比較基準で、MLBの規定到達条件ではありません。所属は集計データの球団表記です。

2026年レギュラーシーズン、捕手本人の挑戦20回以上。右端は成功数/挑戦数。出典:Baseball Savant。日本時間2026年10月27日取得。
捕手全体では5,613回中3,287回成功で、成功率は58.6%でした。リアルミュートはこれを約22.8ポイント上回っています。上位10人の中でも、21回のレオンと136回のステファンソンでは試行数に大きな差があり、率と回数を合わせて読むことが重要です。
リアルミュート:86回中70回成功、それでも残る「見送った判定」
リアルミュートの強みは、挑戦したときの精度です。86回のうち失敗は16回にとどまり、同じく50回以上挑戦した捕手の中でも、唯一80%を超えました。少ない出場機会でたまたま高率になった選手とは区別して評価できます。
一方、覆せる誤判定をどれだけ拾ったかを見ると、違う側面が表れます。リアルミュートが覆したのは、挑戦権が残っている状況で覆せた判定の約27%でした。確信を持てる球を選ぶ姿勢は高い成功率につながりますが、その分だけ訂正の機会も残しています。
「挑戦すれば当たる」と「必要な場面で十分に挑戦している」は別の評価軸です。81.4%という数字は判断精度の高さを示しますが、この数字だけでABSによる守備貢献まで最大だったとは言い切れません。
少ない挑戦でも目立ったレオン、ガーバー、キズナー、ジャンセン
サンディ・レオン:21回中16回成功の76.2%
20回以上の条件で2位に入ったのがレオンです。失敗は5回で、限られた挑戦の中で高い精度を示しました。ただし、リアルミュートの約4分の1の挑戦数なので、年間を通じて同等の精度を維持できるかは、さらに試行を重ねて見たいところです。
ミッチ・ガーバー:34回中25回成功の73.5%
ガーバーは34回中25回成功で3位でした。先発出場の多さや打撃成績だけを見ていると埋もれやすい、捕手としての貢献です。出場機会の異なる捕手を評価する際には、成功率と、その機会で取り戻したストライク数を分けると特徴が見えてきます。
アンドリュー・キズナーとダニー・ジャンセンも7割超
キズナーは36回中26回成功で72.2%、ジャンセンは32回中23回成功で71.9%でした。いずれも捕手全体の58.6%を大きく上回り、判定を覆せる球を選ぶ精度が目立ちます。成功数はキズナーが3回多い一方、試行数も4回多く、順位だけでは差を大きく捉えすぎないようにしたいです。
ペレスとケリー:50回以上の挑戦でも保った高い成功率
サルバドール・ペレス:65回中46回成功の70.8%
ペレスは、50回以上挑戦した捕手に絞るとリアルミュートに次ぐ成功率です。65回中46回成功という回数も伴っており、7割超を記録した捕手の中でも存在感があります。
ただし、ベテランだから成功したと原因まで断定することはできません。経験や球筋の見え方に加え、受ける投手、判定されたコース、どの程度確信があれば挑戦するかという基準も数字に影響します。まず評価したいのは、実際に46球の判定を取り戻した結果です。
カーソン・ケリー:93回中64回成功の68.8%
ケリーは93回挑戦し、64回成功しました。全体の上位10人では8位ですが、50回以上の選手に絞れば成功率3位です。比較的多くの挑戦機会をこなしながら、率も高い水準に保ちました。
同じカブスのミゲル・アマヤも76回中49回成功で64.5%でした。ケリーだけでなく別の捕手も平均を上回っており、カブスを見る際には捕手交代後のチャレンジ判断にも注目できます。
ステファンソンとグッドマン:成功率より回数が語る貢献
ステファンソンは136回中93回成功で68.4%、グッドマンは113回中77回成功で68.1%でした。成功率はリアルミュートより低くても、取り戻した判定の数では、それぞれ23回、7回上回っています。
ステファンソンの場合、リアルミュートより50回多く挑戦し、失敗も27回多くなっています。その代わりに23回多く判定を覆しました。挑戦数が増えると、成功も失敗も増えます。失敗数だけを見て消極策を評価すると、得られた利益を見落とします。
また、同じ1回の成功でも、初球をストライクに戻す場合と、2ストライクから三振に変える場合では影響が違います。成功数は分かりやすい実績ですが、得点への影響まで比べるには、走者やアウトカウントも必要です。
コントレラスは105回成功、スミスは61.0%:人気捕手2人のABS成績
ブリュワーズのウィリアム・コントレラスとドジャースのウィル・スミスは、成功率上位10人には入りませんでした。ただし、2人を比較すると、成功率だけで捕手を評価する難しさがよく表れています。
| 捕手 | 球団 | 挑戦 | 成功 | 失敗 | 成功率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウィリアム・コントレラス | ブリュワーズ | 185 | 105 | 80 | 56.8% |
| ウィル・スミス | ドジャース | 59 | 36 | 23 | 61.0% |
ウィリアム・コントレラス:成功率は平均以下でも、成功数は捕手最多
コントレラスは185回中105回成功で、成功率は56.8%。捕手平均の58.6%をやや下回りましたが、挑戦数と成功数はいずれも捕手最多でした。成功数ではステファンソンを12回、リアルミュートを35回上回っています。
失敗も80回あり、精度の面では改善の余地があります。それでも、率だけを見て「ABSが苦手」と片づけると、105球をストライクに戻した実績が抜け落ちます。リアルミュートが高精度で選別した捕手なら、コントレラスは多くの機会に挑み、成功の総数を積み上げた捕手と捉えられます。
もちろん、出場機会や受けた判定の数も違うため、成功数の差をそのまま能力差にはできません。さらに、失敗で権利を失った後に取り戻せなかった判定まで考えると、105回成功という数字だけで最も効率的だったとも言い切れません。
ウィル・スミス:59回中36回成功で捕手平均を上回る
スミスは59回中36回成功で、成功率は61.0%でした。捕手平均を約2.5ポイント上回りますが、リアルミュートやペレスほどの高率ではありません。成功率はコントレラスより高く、成功数は少ないという関係です。
リアルミュートと同じように、覆せた判定を実際に取り戻した割合も見ると、スミスは約28%でした。これは挑戦した球の成功率61.0%とは分母が異なります。見極めの精度だけでなく、見送った訂正機会をどこまで減らせるかも、来季に向けた注目点です。
スミスが挑戦を控えた理由を、この成績だけで球団方針や本人の性格に結び付けることはできません。試合を見る際には、際どい球で挑戦するかに加えて、カウントと残りの挑戦権を確認すると、その判断をより具体的に追えます。
ディングラーも65.7%:高成功率の捕手を見るときの3つの視点
タイガースのディロン・ディングラーも108回中71回成功で65.7%と、100回以上の挑戦で平均を上回りました。上位10人に入らなくても、成功数ではリアルミュートより1回多くなっています。
- 成功率:実際に挑戦した判定を、どの程度の精度で覆したか。
- 成功数と機会の活用:何球を取り戻し、覆せた判定をどれだけ見送ったか。
- 場面の価値:三振や四球、得点機にどれだけ影響したか。
ABSは全投球の判定を機械に任せる方式ではなく、球審の判定に対して選手が異議を申し立てる仕組みです。各チームは2回の挑戦権を持ち、成功すれば権利を維持し、失敗すれば1回失います。そのため、捕手には球の位置を見極める力と、残りの権利をどこで使うかという判断の両方が求められます。
フレーミングの価値も残ります。最初からストライク判定を得られれば、チャレンジを使う必要がありません。判定を引き出す技術と、逃したストライクを取り戻す技術は、別々に働きながら投手を支えます。
1球や1アウトの使い方が戦術を左右する点は、2026年にスモールベースボールが再評価された背景ともつながります。攻撃の小技と同じように、ABSも回数を増やすこと自体より、どの場面で使って利益を得たかが大切です。
なお、10回以上に条件を広げると、エイドリアン・デルカスティーヨが10回中9回成功の90.0%、P.J.ヒギンズが11回中9回成功の81.8%でした。こうした選手も注目に値しますが、1回の成否で率が大きく動きます。2026年の実績を振り返るなら、リアルミュートの精度を軸に、ステファンソンの回数、ケリーの率と回数の両立を見比べると、それぞれの強みがよく分かります。
参考情報
- Baseball Savant:2026年捕手別ABSチャレンジ成績
- Baseball Savant:成功率と機会活用の違い、捕手守備評価への反映
- Baseball Savant:ABSの指標とフレーミングの定義
成績は2026年レギュラーシーズン終了時。日本時間2026年10月27日取得。ポストシーズン・オープン戦は含みません。


