佐藤輝明選手がMLBへ移籍した場合、阪神のレギュラー争いは三塁だけでは収まりません。2026年ドラフトで外野手の榊原七斗選手、遊撃を本職とする相羽寛太選手を指名し、2027年にはセ・リーグのDH制も始まります。三塁の後継者を育てながら、左翼とDHでどれだけ打力を積み上げられるかが、来季の打線を左右します。
※2026年10月23日時点。佐藤選手のMLB移籍が成立した場合を想定した展望です。新人は入団を前提とし、今後の補強・契約によって競争相手は変わります。
佐藤輝明の移籍で空くのは、三塁と中軸の二つの役割
阪神は佐藤選手のポスティングによるMLB挑戦を容認し、本人も10月21日に会見しました。来季の三塁手を考えることは、すでに現実的な編成課題になっています。
佐藤選手は2026年のレギュラーシーズンで打率.306、39本塁打、106打点を記録しました。この穴を考える際は、「三塁を守る選手」と「打線の長打力を支える選手」を分けて見る必要があります。
若手が三塁の定位置をつかんでも、すぐに39本塁打級の打撃まで求めるのは負担が大きすぎます。三塁では守備と打撃の成長を待ち、森下翔太選手や大山悠輔選手を中心とする中軸と、左翼・DHの打力で得点力を補う形が現実的です。
たとえば立石正広選手を三塁で育てるなら、その選択が成功するかどうかは本人だけでは決まりません。周囲で長打と出塁を増やせれば、若い三塁手に打線のすべてを背負わせずに済みます。
2026年ドラフトは野手3人――三塁の即席補充より競争の底上げ
阪神は今回のドラフトで支配下7人、育成2人の交渉権を獲得しました。支配下の野手は、1位の榊原選手、4位の相羽選手、6位の越川海翔選手の3人です。
| 指名選手 | 所属・守備位置 | 来季の争いへの影響 |
|---|---|---|
| 1位・榊原七斗 | 明治大・外野手 | 左翼争いへの参戦、中堅の選択肢拡大 |
| 4位・相羽寛太 | ヤマハ・内野手 | 遊撃争いと内野の選手層に刺激 |
| 6位・越川海翔 | 東京ガス・捕手 | 捕手陣の競争に加わる存在 |
2026年10月22日の指名結果。競争への影響は各選手の守備位置を踏まえた考察です。指名結果の出典は末尾に掲載しています。
目を引くのは、三塁の強打者を上位で指名する形にはならなかったことです。榊原選手は外野手で、相羽選手も主戦場は遊撃です。今回の指名だけで佐藤選手の後継者が決まったわけではありません。
この結果からは、既存の若手に三塁を争わせつつ、外野と内野の競争を厚くする方向性が見えてきます。捕手の越川選手まで三塁の後継候補に数えるのではなく、それぞれが本来のポジションで一軍にどの程度近づけるかを見るべきです。
三塁は立石正広が先頭候補、谷端将伍は挑戦する立場
立石は「後継者」の期待を、継続して使える打撃に変えられるか
三塁争いで最初に名前を挙げたいのは立石選手です。2026年は一軍で三塁と左翼を経験し、シーズン終了後のフェニックス・リーグでは三塁を軸に実戦を重ねています。佐藤選手の後継を狙う意思も示しており、準備の方向が明確です。
ただし、一軍での2026年最終成績は38試合、打率.192、2本塁打でした。127打席で41三振という内容も含め、定位置を任せるにはプロの投手への対応を進める必要があります。
春に見たいのは、本塁打の数だけではありません。追い込まれる前に打てる球を捉えられるか、変化球を見極められるか、凡退した次の打席で修正できるか。長打の魅力を残しながら打席の内容を安定させられれば、三塁で継続起用する理由が強まります。
立石選手が三塁に定着する利点は、左翼争いを整理できることにもあります。左翼にも立石選手を回す必要がある状態より、榊原選手や前川右京選手、高寺望夢選手らの役割を決めやすくなります。
谷端は三塁の守備機会を増やし、打撃で差を縮めたい
谷端将伍選手も三塁を争う候補になります。ただ、立石選手と同じ一軍経験を持つわけではありません。2026年の一軍出場は1試合にとどまり、まずは一軍で起用を続けてもらえる材料を増やす段階です。
ファームでは二塁で85試合、三塁で15試合に出場しました。三塁の経験はありますが、今季は二塁での出場が中心だったことも押さえておきたい点です。
来春に三塁でどれだけ実戦機会を与えられるかは、首脳陣の評価を見る手がかりになります。そのうえで、打球への反応や送球を安定させ、打撃でも一軍投手から安打を重ねられれば競争に食い込めます。大学時代の評価だけで立石選手と横一線に置くより、守備と打撃の両面で差を縮める挑戦者として見るのが自然です。
榊原七斗の加入で、左翼は前川・高寺を含む争いへ
ドラフトで最も直接的に競争が激しくなるのは外野です。榊原選手は走攻守を備えた左打ちの外野手で、中堅を守れることも持ち味です。近本光司選手の将来の後継候補という見方に加え、早い段階で左翼争いへ入れるかが焦点になります。
近本選手を中堅、森下選手を右翼の軸に置くなら、残る先発枠は左翼です。2026年にその座を争った前川選手、高寺選手に榊原選手が加わり、福島圭音選手や岡城快生選手らも出場機会を狙う構図が考えられます。
前川選手に求めたいのは、打撃で先発起用を引き寄せることです。佐藤選手が抜ける打線では、左翼から長打を供給できる選手の価値が高まります。一方、高寺選手らが守備や走塁を含めて貢献すれば、投手を支える布陣を組みやすくなります。
榊原選手は、その間に入れる可能性があります。打撃で一軍に対応し、外野守備でも信頼を得られれば、先発から使いやすい選手になります。ただし、大学での評価とプロでの即戦力性は別です。キャンプから外野の打球判断や送球も含めて見ていく必要があります。
ここでDHが効いてきます。たとえば榊原選手を左翼、前川選手をDHに置けば、両者を同時に先発起用できます。左翼争いの勝者だけを打線に残す形から、守備と打撃の特徴に応じて出場機会を分ける形へ変えられます。
相羽寛太はまず遊撃争いへ――三塁の穴に直結させない
相羽選手は、ヤマハで遊撃を担ってきた右打ちの内野手です。佐藤選手の移籍と同じ時期に指名されたからといって、いきなり三塁の最有力候補と見るのは早いでしょう。
まず競争相手になるのは、熊谷敬宥選手、元山飛優選手、小幡竜平選手、木浪聖也選手らの遊撃候補です。相羽選手が守備を軸に一軍へ近づければ、遊撃の先発だけでなく、試合終盤の内野の組み方にも選択肢が増えます。
これは三塁の若手を支えるうえでも意味があります。三塁で育成を兼ねた起用を続けるなら、二遊間の守備まで不安定になる状況は避けたいからです。相羽選手の加入が、間接的に三塁の競争を支える可能性があります。
もっとも、社会人出身でも一軍の定位置は保証されません。プロの球速や変化球への対応、連戦の中で守備を維持する力を示して初めて、既存の内野手を上回る評価につながります。
2027年のDH導入で、三塁・左翼・DHをどう組み合わせるか
セ・リーグは2027年シーズンからDH制を採用します。阪神にとっては佐藤選手の退団が想定される年に、投手に代わる打者をもう1人、先発に加えられることになります。
ただし、DHで増える攻撃機会は他の5球団にもあります。枠が増えるだけで得点力不足が解決するわけではなく、そこに誰を置けるかが勝負です。新外国人を含む補強次第で、若手の争う枠数も変わります。
現有戦力と今回の指名を踏まえると、主に次の組み合わせが考えられます。
| 想定する形 | 三塁・左翼・DHの例 | 成立の条件 |
|---|---|---|
| 若手を同時に起用 | 三塁・立石/左翼・榊原/DH・前川 | 立石と榊原の一軍対応、前川の打力 |
| 左翼の守備を重視 | 三塁・立石または谷端/左翼・高寺/DH・前川など | 三塁候補の成長、DHでの打撃貢献 |
| 補強で長打力を追加 | 三塁・若手/左翼・競争の勝者/DH・新外国人 | 中軸を担える打者の獲得と適応 |
各配置は起用を考えるための例です。球団の正式な構想や補強決定を示すものではありません。
現時点では、三塁は立石選手を先頭候補に谷端選手らが追い、左翼は前川選手・高寺選手に榊原選手が加わる争いと見ます。DHはその競争で打力を示した選手に加え、今後の補強選手が候補になります。森下選手や大山選手を休ませながら打線に残す運用も考えられ、固定の1人を決める必要はありません。
来春の注目点は、立石選手が三塁で続けて使える打撃を示すか、榊原選手が左翼の先発争いへ入るか、DHに長打を期待できる打者を置けるかの3点です。この3つがそろえば、佐藤選手の役割を複数人で分担する道筋が見えてきます。
佐藤選手のMLB移籍先と契約規模については、移籍先候補4球団の適合度と契約予想で整理しています。


