MLBの年金は、メジャーに通算43日間在籍すると、将来受け取る資格を得られます。10年に届けば満額の目安となり、2026年は62歳から受け取る場合で年29万ドル、日本円で約4,350万円です。
ただし、「43試合に出ればよい」「引退したらすぐにもらえる」という意味ではありません。受け取るための条件と、日本人選手を見るときのポイントを順に整理します。
※円換算はすべて1ドル=150円の計算例です。実際の円換算額は為替で変わります。金額は税引き前の目安です。
まずは3つだけ:43日で資格、10年で満額、62歳で受給
MLBの年金は、メジャーで過ごした期間が長いほど、将来もらえる金額が増える仕組みです。最初に、次の3つを押さえておくと分かりやすくなります。
| 条件 | どうなる? |
|---|---|
| 通算43日の在籍 | 将来、年金を受け取る資格を得られます |
| 通算10年の在籍 | 満額を受け取るための在籍期間の目安です |
| 62歳から受け取る | 早期受給による減額を受けずに受け取れます |
つまり、10年に届かなくても年金はもらえます。43日以上の対象期間があれば、数年で日本に戻った選手にも、その期間に応じた年金があります。
なお、ここでいう在籍期間には数え方のルールがあります。これを「サービスタイム」と呼び、単純に入団から引退までの年月を数えるわけではありません。
※現在の選手に関する基本的な説明です。1980年より前に現役を終えた選手には、別の条件があります。
いくらもらえる?10年なら年約4,350万円が目安
2026年に62歳から受け取る場合、年金額の目安は次のとおりです。日本円も並べると、在籍期間による違いがつかみやすくなります。
| 在籍期間 | 年額・ドル | 年額・日本円 |
|---|---|---|
| 43日 | 7,250ドル | 約109万円 |
| 1年 | 2万9,000ドル | 約435万円 |
| 5年 | 14万5,000ドル | 約2,175万円 |
| 10年 | 29万ドル | 約4,350万円 |
※2026年・62歳から受給する場合の一般的な目安です。円換算は1ドル=150円。個々の選手の受給額は、適用される条件や受け取り方によって異なります。出典:Moment Private Wealth。

図:在籍期間ごとの年金額。2026年・62歳受給開始、1ドル=150円で換算。出典:Moment Private Wealth。2026年10月28日確認。
10年の満額目安を月平均にすると、約2万4,200ドル、日本円で約363万円です。ただし、この金額を引退直後から受け取れるわけではありません。
45歳からも受け取れるが、金額は少なくなる
MLBの年金は、最も早ければ45歳から受け取れます。ただし、62歳より早く受け取り始めると、金額が減ります。
たとえば、在籍期間が同じ10年の選手でも、45歳から受け取る場合と62歳から受け取る場合では年額が違います。「何年在籍したか」と「何歳から受け取るか」の両方で考えることが大切です。
また、年金額の基準は年によって変わります。過去の記事と金額が違う場合は、何年の金額なのかも見ておくと混乱しません。
43試合ではなく43日:ベンチの日や故障中も数える
サービスタイムは、簡単にいうと「メジャーの選手として登録されていた日数」です。基本的には、レギュラーシーズン中にメジャーの試合へ出場できる選手枠に入っていた日と、MLBのIL(故障者リスト)に入っていた日を数えます。
そのため、試合に出ずベンチにいた日や、試合のない日も、対象の登録状態なら数えられます。けがで登板できなかった投手も、MLBのILに入っていれば、その期間は在籍日数に含まれます。
一方、通常のマイナーリーグでの在籍期間は含まれません。「MLB球団と契約していた期間」と「年金の計算に使う期間」は、必ずしも同じではありません。
172日で1年。毎年365日を数えるわけではない
この制度では、172日の登録で1年分と数えます。1シーズンで数えられるのは最大1年分です。
たとえば、初めて昇格した年に43日間登録されれば、年金の資格を得られます。その後もメジャーで在籍日数を重ねると、将来の年金額が増えていきます。
日本人選手はどう見る?大谷・ダルビッシュらを例に整理
日本人選手も、年金を見るときに大切なのはメジャーでの在籍期間です。日本のプロ野球で活躍した年数や、契約書に書かれた年数を、そのまま足すわけではありません。
例として、2026年1月時点で公表されている数字を、分かりやすい表記に直して並べます。
| 選手 | 在籍期間 | 10年との関係 |
|---|---|---|
| ダルビッシュ有 | 13年146日 | 10年を超えています |
| 大谷翔平 | 8年 | この時点では10年未満です |
| 菊池雄星 | 7年 | この時点では10年未満です |
※Baseball-Referenceの2026年1月時点の公表値です。2026年シーズンの分は含みません。確認日:2026年10月28日。
ダルビッシュは、この時点ですでに満額の目安となる10年を超えています。大谷と菊池も受給資格の43日を大きく超えており、「10年未満だから年金がない」ということではありません。
大谷のような高額契約の選手でも、契約しただけで10年分の在籍期間が付くわけではありません。年俸や契約金と年金は、別々に見る必要があります。年俸については、日本人メジャーリーガーの年俸を扱った記事でも紹介しています。
選手紹介で「13.146」のような数字を見かけたら、「13年と146日」と読みます。小数ではないので、13.146年と考えなくて大丈夫です。
松井秀喜の「10シーズン出場」と、制度上の10年は別
松井秀喜は、2003年から2012年までの10シーズンにMLBで出場しました。ただし、最後の2012年は4月30日にマイナー契約を結び、メジャーへ昇格したのは5月29日でした。
シーズン途中からの昇格でも、経歴には「その年もMLBでプレーした」と記録されます。しかし、年金では実際の登録日数が重要です。
そのため、「10シーズン出場した」という経歴だけで、満額の条件を満たしたと決めることはできません。日本人選手の年金を紹介する一覧を見るときも、出場した年の数か、制度上の在籍期間かを分けると分かりやすくなります。
10年に届かないMLB挑戦にも、年金の価値がある
MLBの年金は、長く活躍したスター選手だけのものではありません。43日の資格を得た選手には、短いキャリアでも将来の収入につながる権利があります。
シーズン途中の昇格や、ベテラン選手のメジャー残留には、その年の年俸を得るだけでなく、将来の年金を増やす意味もあります。日本人選手がメジャーで過ごす1年には、成績や契約金だけでは見えない価値もあるのです。
なお、年金と医療保険は別の制度です。引退後の医療プランには、4年の在籍期間などの条件や本人の保険料負担があり、「一度メジャーへ上がれば、生涯の医療費がすべて無料」というわけではありません。
参考情報
- MLBPA:2022–2026 Basic Agreement(Article XXI:サービスタイム)
- Moment Private Wealth:MLB Pension 2026 Update(金額・受給開始年齢)
- BIP Wealth:MLB Pension Plan(43日・四半期単位の考え方)
- IRS:Defined benefit plan benefit limits(2026年の一般上限)
- Baseball-Reference:ダルビッシュ有(2026年1月のサービスタイム)
- Baseball-Reference:大谷翔平(同)
- Baseball-Reference:菊池雄星(同)
- MiLB:松井秀喜の2012年契約・昇格履歴
- Moment Private Wealth:MLB Retirement Plan 2026 Edition(医療制度との違い)
- Atlanta Braves Holdings:2025年財務報告(年金制度の性質・拠出)


