ザック・ネトを獲得するために、佐々木朗希、ジャスティン・ロブレスキー、ダルトン・ラッシングを同時に放出する。話題の交換案に対する結論は、ネトには大型トレードに見合う価値があるものの、ドジャースがこの3人をまとめて差し出す判断には慎重であるべき、というものです。打線の若返りで得るものに対し、先発と捕手の層を削る負担が大きいためです。
※日本時間2026年11月2日時点の考察です。対象はメディアの交換提案で、両球団がこの条件で交渉していると確認された情報ではありません。成績は2026年レギュラーシーズンの確定値です。
佐々木・ロブレスキーらの移籍説は「3対1」の提案が出発点
今回の案は、Bleacher Reportのザカリー・D・ライマー氏が10月28日に示したものです。組み合わせは、ドジャースがネトを獲得し、エンゼルスが佐々木、ロブレスキー、ラッシングを受け取る形です。
ここで見極めたいのは、交換相手として名前が挙がることと、球団が実際に放出へ動いていることの距離です。この提案だけを根拠に「佐々木のエンゼルス移籍が近い」と読むことはできません。まずは両球団に成立させたい理由があるかを考える段階です。
編成上の評価としては、ネトへの関心が生じることには合理性がある一方、提示された3人を同時に動かす形の実現性は低いと考えます。ネトの魅力と、ドジャースが支払える上限を分けて見る必要があります。
ネトは「27本塁打の打者」以上の価値を持つ
対価が高すぎるかを論じる前に、ネトを安く獲得できる選手と考えないことが出発点です。2026年は27本塁打、24盗塁、OPS .766を記録しました。長打と走力を備える遊撃手を獲得する意味は、打撃成績の数字だけでは捉えきれません。
現行の保有期間は2029年までで、今オフに獲得する球団は原則として2027~29年の3シーズンを見込めます。半年や1年の短期補強とは異なり、複数年の内野編成を組み直せる選手です。年俸調停で給与は上がるため、残り3年をすべて最低年俸で使えるわけではありません。
一方、OPS .766を、そのまま打線全体を一変させる圧倒的な打力と評価するのも行きすぎです。守備についても評価が分かれており、「遊撃を守れる」と「現在のドジャースより確実に守備力が上がる」は同じ意味ではありません。獲得費用は、ネトという選手の総合力に加え、自軍で生まれる改善幅から判断したいところです。
エンゼルスにも、中心選手を無理に売る必要はありません。買い手が高いと感じる条件を要求し、満たされなければ残すという判断は合理的です。売り手の要求が理解できても、ドジャースが応じるべきかは別の問題になります。
2投手で262回1/3――「先発が多い」だけでは手放せない
この案で最も重いのは、先発候補を2人同時に失うことです。ロブレスキーは2026年に140回、防御率3.66、佐々木は122回1/3、防御率4.49を記録しました。合計は262回1/3です。

2026年の救援登板を含む総投球回です。翌年も同じ投球回になるという予測ではありません。出典:MLB。
2人を放出すれば翌年そのまま262回1/3が不足する、という計算ではありません。他の先発が健康なら、その一部を引き受けられます。ただ、故障者が出たときに誰が穴を埋めるのか、代わりの投手を獲得するために何を支払うのかという問題は残ります。
先発の人数が多いチームほど、余剰に見える投手を動かす誘惑があります。しかし、開幕前の候補人数と、夏まで実際に投げられる人数は一致しません。2人をまとめて出すなら、残す先発陣だけでなく、次に昇格させる投手まで含めた計画が必要です。
ネトの獲得費用を3人の交換価値だけで考えると、この補充費用を見落とします。FA投手への支出や、別のトレードで必要になる若手まで加えても改善になるのか。資金力のあるドジャースでも、そこを省略する理由はありません。
佐々木とロブレスキーは、同じ理由で放出する投手ではない
ロブレスキーを残す理由は、まずメジャーで投球回を担った実績です。佐々木を残す理由には、今後の成長を自軍で受け取れる可能性も加わります。この2つを「先発の余り」として一括りにするのは粗い判断です。
佐々木の防御率4.49だけを見れば、現時点で絶対に動かせない完成されたエースとは言えません。ただし、9月の救援復帰を、先発としての将来を断念した証拠と読むのも早計です。短期決戦を見据えた起用と、翌年以降に任せたい役割は分けて考えるべきです。
佐々木が先発として伸びれば、放出時点の評価を上回る価値を相手へ渡す可能性があります。逆に、成長が止まったり、十分に稼働できなかったりするリスクもあります。その不確実性があるからこそ、期待だけでエース級の価値を付けることも、現在の防御率だけで安く扱うことも避けたいところです。
2人のうち1人を軸に話を考える場合と、2人とも出す場合では、ドジャースが失う選択肢の幅が変わります。交換要員として検討できる投手がいることと、その投手を全員まとめて差し出すことは別です。
ラッシングの右肘手術は「3人も取れる」という見方を変える
ラッシングは現地10月21日に右肘の手術を受け、捕手復帰まで約9か月、打者としてはそれ以前の復帰が見込まれています。2026年は12本塁打、OPS .788でした。
この状態を踏まえると、エンゼルスが健康な即戦力を3人受け取る交換とは言えません。捕手としての送球が戻るか、復帰後にどれだけマスクをかぶれるかによって、ラッシングの価値は変わります。打てる捕手として評価する場合と、打者として出場先を探す場合では、必要な打力の水準も異なります。
ドジャース側から見ても、ウィル・スミスがいるからラッシングは不要、とは整理できません。捕手の故障や休養への備えと、将来の左打者としての役割が残るためです。一方で、復帰まで待つ余裕や打席の配分によっては、他球団の方が活用しやすい可能性もあります。
したがって、手術を無視して「若手の主力3人だから明らかな過払い」と断定するのは適切ではありません。それでも、ラッシングの評価が下がった分を埋めるために佐々木とロブレスキーの両方を加える、という発想には慎重であるべきです。交換案の評価が難しくなったことを、放出人数を増やす理由にはできません。
ネトを遊撃に置くなら、ベッツの移動先まで決めたい
ドジャースがネトに大きな対価を払うなら、最も納得しやすいのは遊撃の中核として起用し、ムーキー・ベッツの配置も含めて内野全体を改善する構想です。単に打者を1人増やすだけでは、投手2人と捕手を失う負担に見合いにくくなります。
ただし、ベッツを他のポジションへ動かせば、その場所で出場していた選手の打席や守備機会が減ります。評価すべきなのはネトの成績を丸ごと足した打線ではなく、押し出される選手を差し引いた後の打線と守備です。
ネトを三塁で使う構想なら、遊撃手としての希少性に払う対価を十分に回収できるかも問題になります。遊撃を守れる選手を三塁へ置くこと自体は悪くありませんが、補強点が三塁なら、別の選手を獲得する方法とも比較する必要があります。
このため、ドジャース側の賛成条件は「ネトが良い選手だから」だけでは足りません。ネトを加えた守備配置が固まり、失う投球回の補充にもめどが立ち、その費用込みでチームが強くなることが必要です。
エンゼルスが求める高値と、ドジャースが払える上限は一致しない
エンゼルスにとっては、ネトを軸に戦力を整える道と、複数の若手へ交換して不足を埋める道があります。後者を選ぶとしても、人数が多いだけで満足できるわけではありません。遊撃の穴と引き換えに、どの時期にどのポジションで勝利へつなげられるのかが重要です。
球団は売却合意後の移行期にあり、売却完了は2027年初めの見込みです。新体制の方針が、ネトを残して補強する方向へ向かうのか、交換で選手層を広げる方向へ向かうのかは、移籍の実現性を左右します。所有者交代だけを理由にネト放出が進むとは考えられません。
現時点の編成上の見立てを整理すると、次のようになります。
| 想定する動き | 実現性の見立て・条件 |
|---|---|
| ドジャースがネトを獲得候補として検討 | 合理性はあります。遊撃の若返りと守備配置が焦点です。 |
| 佐々木らのうち1人を軸に交換条件を構想 | 検討余地はありますが、エンゼルスが求める全体の対価次第です。 |
| 佐々木・ロブレスキー・ラッシングを同時放出 | 現状では実現性を低く見ます。先発の補充と捕手の回復評価が重い条件です。 |
これは交渉の進み具合を示す順位ではなく、編成上の条件から見た評価です。1人を軸にすれば必ず成立する、という意味でもありません。エンゼルスがそれ以上を求めるなら、ドジャースには交渉を見送る選択肢があります。
「ネトにそこまでの価値がない」よりも、「ネトを加えるために別の重要な戦力を削りすぎる」というのが、3人放出案に反対する強い理由です。今後は移籍先の名前より、ネトの起用位置、残す先発陣、エンゼルスの新体制が示す方針を見たいところです。その3点が具体化しないうちは、佐々木らの移籍を有力視する材料は足りません。
投手陣を含む契約満了の状況は、2026年オフのドジャースFA選手一覧で整理しています。ネトの獲得を考える際も、先発・救援の補充と一体で見る必要があります。


