タンパベイ・デビルレイズが「レイズ」に改名したのは、「Devil」という言葉への抵抗感に配慮しながら、低迷が続いた球団のイメージを刷新するためです。2007年11月8日に新名称を発表し、2008年シーズンから「タンパベイ・レイズ」として戦い始めました。しかも、この変更には、名前を短くする以上の意味がありました。
「悪魔」を外すだけでなく、球団の再出発を示す改名でした
改名の背景は、大きく二つあります。一つは、「悪魔」を意味するDevilという単語に対する反発です。旧名称は海の生き物に由来していましたが、言葉そのものを好ましく思わず、変更を求める声が球団に寄せられていました。
もう一つが、チームのブランドを立て直す狙いです。1998年にMLBへ参入したデビルレイズは、最初の10シーズンすべてで負け越しました。2005年に球団運営を引き継いだスチュアート・スターンバーグ氏らにとって、名称やユニフォームの刷新は、組織が変わりつつあることをファンへ伝える手段でもありました。
スターンバーグ氏は新名称の発表時、過去のイメージに結び付いていた球団が、新たなアイデンティティーを持つことの意義を説明しています。「Devilが嫌われたから」という理由だけでは、改名の狙いを十分には説明できません。低迷期との区切りを、外から見ても分かる形にしたのです。
エイを表す「ray」が、フロリダの「太陽の光」になりました
英語のrayには、魚の「エイ」と「光線」という別の意味があります。旧名称のDevil Raysはエイに由来しますが、新しいRaysでは、フロリダらしい太陽の光が前面に出されました。
フロリダ州の愛称は「サンシャイン・ステート」です。新しい球団ロゴに加わった黄色い光のマークも、この方向性を表しています。海の生き物を主役にした名前から、地域の明るいイメージを伝える名前へ、重心を移しました。
| 比較項目 | デビルレイズ時代 | 改名後のレイズ |
|---|---|---|
| 名称 | Tampa Bay Devil Rays | Tampa Bay Rays |
| 名称の使用シーズン | 1998〜2007年 | 2008年〜 |
| 前面に出すモチーフ | エイ | 太陽の光 |
| ユニフォームの基調 | 改名直前は緑系 | 紺・水色系 |
注目したいのは、Raysという部分を残したことです。呼び慣れた名前とのつながりを保ちながら、同じ単語に新しい意味を持たせられました。ファンにとっての親しみやすさと、イメージ刷新を両立しやすい変更だったと考えられます。
改名初年度の2008年、66勝のチームが97勝で地区優勝しました
レイズへの改名が強く印象に残るのは、その直後に成績まで大きく変わったからです。デビルレイズ最後の2007年は66勝96敗でしたが、2008年は97勝65敗と、前年から31勝も増やしてア・リーグ東地区を制覇しました。
さらにポストシーズンを勝ち進み、球団初のワールドシリーズへ進出しました。最下位から地区優勝、そしてリーグ優勝へ。新名称の初年度に、球団の見られ方を変えるシーズンが重なったのです。
もちろん、勝利数を増やしたのは名前の変更そのものではありません。ジョー・マドン監督の下で進んだチームづくりや、戦力の変化が結果につながりました。改名は、その変化を象徴する出来事として捉えると分かりやすくなります。
2026年は「デビルレイズ」の姿で、再びワールドシリーズへ
「太陽の光」が新しい名前の中心になっても、旧名称の歴史は受け継がれています。2024年にも「Devil Rays Day」で着用された復刻ユニフォームが、2026年のプレーオフでは、ワールドシリーズ進出を決める舞台にも登場しました。
ガーディアンズとのア・リーグ優勝決定シリーズでは、現地10月13日(日本時間14日)の第2戦にデビルレイズ時代の復刻ユニフォームを着用し、3対1で勝利しました。さらに現地10月19日(日本時間20日)の第6戦でも同じ復刻デザインで臨み、7対3で勝利。シリーズを4勝2敗で制し、2008年、2020年に続く球団3度目のワールドシリーズ進出を決めました。
2008年は、新しい「レイズ」の名前で初めてワールドシリーズへ進みました。そして2026年には、旧名称を胸に刻んだユニフォームで再びリーグ優勝をつかんでいます。かつて低迷期を連想させたデザインが、今度は勝ち進むチームの姿と結び付いたのです。
この変化に、改名後の球団が積み重ねてきた歴史が表れています。名称を変えて新しいイメージを築きながら、創設当時の意匠も大舞台で着られるようになりました。「デビルレイズ」は、球団の原点を伝える存在として、現在の「レイズ」と共存しています。
つまり、デビルレイズからレイズへの変更は、「Devil」を外し、太陽の光という地域性を加え、球団の再出発を示した改名でした。短くなった名前には、過去との区切りと、そこから続く歴史の両方が込められています。


