ドジャースは今後も豊富な資金力でスター選手を集め続けられるのでしょうか。2026年オフのMLB労使交渉では、球団の年俸総額に強制的な上限を設けるサラリーキャップが大きな争点になっています。導入されれば、ぜいたく税を支払いながら大型補強を続ける現在のドジャースにとって、チーム編成の前提が変わる可能性があります。
2026年オフの労使交渉はいつ?サラリーキャップは決定した?
現行の労使協定(CBA)は2026年12月1日に期限を迎えます。MLB機構と選手会(MLBPA)は5月12日に次期協定の交渉を開始しました。サラリーキャップはMLB機構側が提案しているもので、2026年10月17日現在、導入は決定していません。
MLB機構の当初提案は、2027年の球団総年俸の上限を約2億4,530万ドル、下限を約1億7,120万ドルとするものです。上限だけでなく最低支出額を設け、資金力のある球団の突出と、支出を抑える球団の両方に働きかける設計です。
| 項目 | 現行制度(2026年) | MLB機構の2027年案 |
|---|---|---|
| 総年俸の上限 | 強制上限なし | 約2億4,530万ドル |
| 総年俸の下限 | 制度上の一律最低額なし | 約1億7,120万ドル |
| 高額支出への対応 | CBT(ぜいたく税)など | 上限超過を認めないハードキャップ案 |
| 制度の状態 | 現行CBAで適用 | 交渉中・未決定 |
※2027年の金額はMLB機構の当初提案であり、合意済みの制度・最終額ではありません。判定には選手契約の評価額や福利厚生費などが含まれる想定です。
ぜいたく税とサラリーキャップは何が違う?
現行のCBT(Competitive Balance Tax)は、球団の対象年俸総額が基準額を超えた場合に課税する制度です。2026年の基本基準額は2億4,400万ドル。超過を重ねると税率が上がり、追加のペナルティーも発生しますが、球団が支出額を増やすこと自体は禁止されません。
これに対してハードキャップは、定められた上限を超えるロースター編成を認めない方式です。重要なのは『高い税金を払えば大型補強できる』という選択肢がなくなること。ドジャースのように高い年俸総額を維持してきたチームほど、既存契約を含めた調整が求められます。
なぜオーナー側と選手会は対立しているのか
MLB機構は30球団の戦力均衡を主張
MLB機構は、球団間の年俸格差がファンの『自分のチームも優勝を狙える』という期待を損なっていると考えています。同機構の試算では、2026年開幕時の総年俸を2027年提案額に当てはめると、12球団が下限を満たすため合計約6億1,700万ドルの増額を求められ、8球団が上限まで合計約5億7,800万ドルの削減を必要とします。
選手会は年俸上限がFA市場を抑えると懸念
一方、選手会はハードキャップに反対しています。チームが自由に提示できる契約条件に天井ができれば、特にFA市場のトップ選手の交渉力が弱まると考えるためです。MLB機構は最低年俸や若手選手の待遇改善、リーグ収益に連動する給与の仕組みも提案していますが、総額・分配方法についての評価は対立しています。
争点は『選手に払うお金を増やすか減らすか』だけではありません。トップ選手、若手選手、低支出球団の選手にどのように配分するかという問題でもあります。
ドジャースへの影響は?既存契約と大型補強が焦点
長期契約の多さは新制度で重荷になる可能性
ドジャースは大谷翔平、ムーキー・ベッツ、山本由伸らとの大型契約を軸に、優勝を狙う戦力を築いてきました。ハードキャップが導入された場合、スター選手がいること自体よりも、複数の高額契約を抱えた状態で故障や戦力不足にどう対応するかが課題になります。
これまでは球団の財政力によって不足するポジションを補いやすい構造でした。しかし支出上限が固定されれば、控え選手やブルペンに使える予算が圧迫され、若手の戦力化やトレードによる給与調整の重要性が高まります。
大谷翔平の後払い契約でも上限を回避できない
大谷翔平の10年総額約7億ドルの契約は、多額の後払いを含むことで知られます。ただし、ぜいたく税上の計算では、後払い分も現在価値に割り引いて評価され、大谷の契約は年間約4,600万ドルとして計上されます。
そのため、実際の支払いを後年に回しても、現在のCBT計算から契約が消えるわけではありません。新たなキャップ制度で後払い契約をどう扱うか、既存契約にどのような経過措置を設けるかは、ドジャースへの影響を判断するうえで特に重要です。
高額FA頼みから、育成と契約管理の比重が増す
仮に給与上限が導入されれば、ドジャースが持つ強みは資金力だけではなくなります。スカウティング、マイナー育成、選手の故障管理、契約満了時期を分散する編成技術の価値が高まります。
一方、すでに成立した契約を短期間でどこまで調整させるのかは新CBAの交渉次第です。現行契約の即時削減や主力放出が決まったと考える段階ではありません。
ロックアウトは起こる?2027年シーズンへの影響
12月1日の期限までに新CBAが成立しなければ、球団側がロックアウトを実施する可能性があります。ロックアウトは選手側のストライキとは異なり、球団側が業務を停止する労使上の措置です。
前回は2021年12月から2022年3月まで99日間のロックアウトが続きましたが、合意後に2022年のレギュラーシーズンは162試合開催されました。今回もロックアウトに直結して全試合が失われるわけではない一方、長期化すればFA交渉、トレード、春季キャンプ、2027年の開幕準備に影響が及びます。
ドジャースの黄金時代は終わるのか
結論として、サラリーキャップが導入されても、ドジャースが直ちに弱体化するとは限りません。しかし資金力で補強の失敗を修正できる現在の優位性は縮小する可能性があります。高額契約の組み合わせと、若手・中堅選手の費用対効果を同時に管理できるかが、次の黄金期を左右します。
2026年オフに注目したいのは、①ハードキャップそのものの採否、②既存の長期・後払い契約への適用、③キャップ導入時の移行期間、の3点です。特に②と③が決まらない限り、ドジャースが具体的に何人の選手を放出する必要があるかは判断できません。


